好きな道を選んで生きるということは、
誰でもあこがれる生き方ですが
別の視点から見てみると
嫌いな生き方を遠ざけ、知らず知らずのうちに
人生の光の部分と影の部分に
はっきりと線を引いてしまう生き方とも言えます。
この繰り返しは、彼の心に「野獣」を生み出し、育てます。
野獣はいずれ「反乱」を起こしこの人を苦しめるのです。
「野獣」の反乱の実例をあげましょう。
会員に証券会社の社員がいました。
彼は優秀な成績で大学を卒業し、
一流の証券会社に入り、若くして係長になりました。
エリートコースに乗ったのです。
いわゆる会社人間で、帰宅するのが深夜になることも当たり前。
家庭は二の次、三の次という生活でした。
私は彼の生き方がアンバランスであることを指摘し、
「このままいくと何らかの破綻がくるよ」
「奥さんが浮気でもして、家庭をかえりみなければならなくなるのではないか」
と忠告しました。彼は笑って受け流し、
「女房とは、夫婦とは思えないほどラブラブですよ」と言っていました。
しかし「野獣」は彼の中で確実に育っていったのです。
私の予想通りに、彼は家庭に心を向けなければならないような事態に遭遇しました。
それは奥さんの浮気などではなく、目に入れても痛くないほどかわいがっていた
3歳になる娘さんが白血病にかかっていたことがわかったのです。
彼はできるだけ早く帰って来ては、病院へ顔を出す生活が始まりました。
疲れていた彼は、そんな矢先会社で大口の取引先との間で
ミスから大きなトラブルを起こしてしまいました。
それ以来、エリートコースからはずされ、窓際へと追いやられてしまいました。
しかし奥さんと娘さんはやさしく彼を迎えてくれました。
今まで絶えてなかった一家3人の笑い声が、家庭ではなく病室の中で
戻ってきたのです。
しばらくして彼は「仕事以外にも自分の生きる場所を見つけたような気がします」
と私に告げ、証券会社をやめて家族との時間が持てるような会社に再就職しました。
これなどまさに「野獣の反乱」によって苦しみ、
生き方を変える(変えさせられる)ことによって
「野獣」と和解し、共存していく姿を表しています。
彼は、仕事と家庭のバランスの中で生きてゆくことを苦痛の中で覚えたのです。
切り捨ててきた「家庭」というものに光を当てなければならない時期だったと言えます。
これから「野獣」(家庭)は彼の支えになっていくでしょう。
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